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青山真治『東京公園』

青山真治新作の『東京公園』を見てきた。
もしかしたら今年一番の映画になるかもしれない。
まずコニタンこと小西真奈美榮倉奈々が間違いのない存在であり、スクリーンでの映え方は異常に素晴らしかった。
僕が好きな青山真治は完全にオリジナルのが好きなんだけど(ユリイカやエリ・エリ・レマ・サバクタニなど)、原作ありのレイクサイドマーダーケースもトヨエツの気持ち悪い存在感だとか映像の美しさだけでも楽しめるものになっているように、ガス・ヴァン・サントが「ラストデイズ」や「ジェリー」のように大衆性のない映画を作る一方で「小説家を見つけたら」や「グッド・ウィル・ハンティング」みたいなアカデミー賞ラインの映画をとるように、彼の原作物の作品もまったくもって面白い。
あらすじを説明すると、カメラマン志望の大学生の光司(三浦春馬)が公園で家族写真をとっていたが、ふと乳母車を押した綺麗な人妻を見かけ本人に確認せず撮影していると後ろから「君なにしてるの?」とスーツを着た男性から声をかけられ、その男性からあの人妻を尾行して撮影して欲しと依頼され、というのはこの映画の一番の物語になるんだけど、それも、この二人の関係は?なぜ尾行するのか?などという理由はたいして重要ではなく、また映画の多くの時間をこの話に割かれるわけでない。
この映画のメインのところは、兄弟である光司と美咲(小西真奈美)との関係が一番大きな軸としてあり、それを取り巻く富永(榮倉奈々)とその彼のヒロ(染谷将太)との距離の話や、先の人妻とその依頼者の話がそこにくっついているという感じだと思う。そもそも物語性が弱いのでこの後どういう展開になるんだろう、という期待感を持ちにくい。そういうのがないと見ているのがつらい、というか何が面白いの?という人はいるけど、保坂和志柴崎友香が好きな僕にとって全く気にならない。と、同時にこれは青山信治のオリジナルでないと思った。でも見終わった感想は、間違いなく青山真治である。
いや、この映画について見終わった直後はこう書こうだとかあれを書こうなどといろいろ思っていたのだけど、それらの部分は直後の興奮でしかなくて、落ち着いてくるとたった一つのあるものしか残らないことに気づいた。いや、始めからそこのとだけと分かっていたけど、そこを考えると周りがいろいろふくらんできた、ということかもしれない。
つまり、光司と美咲の距離が僕に取っては一番大きな軸だと思っていたのだけど、その距離が大きく変わるキーとなるシークエンスで、それまで別のシーンでもたびたび使われていた小津安二郎の正面からカメラを見て、交互に画面を切り替えることで会話しているように見せる場面が使われるのだけど、光司が「黒いねえさん」といった後の、光司の構えたカメラ正面から見据えられた小西真奈美(美咲ではなく小西真奈美)の存在感というか演技というか映ってしまっているものというか、小西真奈美そのものから出てくるなにかそのものがすごくて、その台詞以降の5分間ぐらい僕はもだえながら緊張しながら興奮しながらスクリーンを見ていた。つまりなにかというと、小西真奈美から何かが出ていた。それまでの兄弟の関係を一気に崩してしまう姉からでる何かを賢明にカメラの中に押さえようとファインダーからのぞく弟の視線と存在と自身の感情の苦悩といろいろ全てが出ていた演技なのだと思うけど、それがとんでもなく良くて。僕はあの数分を見るためだけにもう一度この映画を見に行きたいと本気で思う。それだけ、そのワンシーンに小西真奈美の何かが詰まっていると感じた。
そもそも僕には小西真奈美鈴木あみ主演のNHKドラマ「深く潜れ〜八犬伝2001〜」で始めて見たんだけど、そのドラマでは暗く影がありすぎてよく分からない人物を演じていた。表情が明るくないので全くかわいく見えなくて印象は強かったけど、綺麗である印象は皆無だった。しかしココリコタイプやその他のドラマにちょくちょく出てくるようになると、あのドラマに出ていた人か!と気づいて、その魅力に気づいた。小西真奈美は明るい笑顔が圧倒的にかわいいんだけど、この映画のようにそんなに明るくなくて、どこか影がある役の方がずっと魅力的に、光っているように思う。そのシーンが、母親が倒れて大島に兄弟で帰るのだけど、父親と弟が外で話している時に、母と娘は病室で会話しているシーンだ。病室内の証明のせいか、メイクのせいか、いずれにしろ監督の演出によって母と娘の顔が気持ち悪いというか、恐ろしいというか、まもなく母が死んでしまう空気とそれを感じているのかただ怖い雰囲気を漂わせた娘にしか見えず、そのs-んを見たときに先のドラマにおける小西真奈美を思い出した。
もちろんこの映画に出ているのは三浦春馬と小西真奈美だけではなくて、榮倉奈々も間違いのない存在であった。豚まんとケーキとワインを食べる顔と会話の間だとか、おでんを食べる演技だとか、大福を食べる様子だとか、それらはこの映画を青山真治の映画たらしめている要素としてかなり重要なそれであると思った。間の取り方が素晴らしく、それに対する光司の顔もその都度非の打ち所がない表情であった。
物語性が弱いであるとかこの先何が起こるんだっていう期待感でスクリーンに向かい続ける映画、同じような小説のみがこの世に存在するわけでなはなくて、そんなモノを期待するならハリウッドとか韓国の映画を見ておけば十分で、そうではなくて会話の間や映っている風景(これは決して絶景とか美景とか観光地的な美しい風景のことではなくて)だけで十分スクリーンやページに意識を向かわせてられるものがあるわけで、この映画は十分ストーリーを追いながら見られる話ではあるけど、それ以外の部分が僕にとっては濃すぎて、だから歯医者の初島高橋洋)の存在はすごく一般的な夫とやおじさんで、彼が映っている間、僕は何か起きるんじゃないか、っていう期待感が起きてしまっていたけど、光司と人妻の初島百合香(井川遥)が同じ画面に映っている時などは、展開はほとんどないしお互いの会話も一切ないにも関わらず充足している感じがして、美しかった。
ここまで説明してきて思ったのが石井克人の『茶の味』だ。あれもはっきり言ってストーリーはかなり薄い。でも見続けられる。違うかな。
あと染谷将太がパーカーに今時の若者っぽい感じが、去年見た『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』を思い出させた。全然関係ないけど。かれはこれから間違いなく来るんだろうなぁ。ヒミズの住田なんてやってしまうなんて。もう明らかに住田じゃないか。
住田な染谷
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